戴冠ミサ
モーツアルトの「戴冠ミサ」
「神様はどんな時でも私の目の前におられるのです。
私はその全能の力を感じ、その怒りを恐れます。でも一方で、
ご自身の創造物に対する愛、あわれみ、優しさも分かるのです。」
(モーツアルトの言葉)
音楽は祈り
以前から、わたしの心には、
音楽に関して素朴な疑問があります。
現在、世界各国で、数えられないほどの曲が音楽家達によって演奏されています。
それらの大半は現代の作曲家たちが作曲した曲よりも、
バッハやハイドン、ヘンデルやリスト、ベートーベン、モーツアルト等
今から何百年も前の人々が作曲したものです。
普通であれば、過去のものが次第に忘れ去られ、
新しいものに人々の興味が移っていってもいいはずなのに、
なぜ、今も変わりなく演奏され聴衆を魅了するのだろうということです。
それは、彼らの作曲した曲が、
単に音楽的に優れているということだけではなく、
その一曲一曲が、
神への敬虔な信仰と深い黙想の中から生まれた「祈り」だからという事に、
気が付いている人は意外と少ないのではないでしょうか。
モーツアルト(1756年―1791年)
音楽史上、天才と言われる数ある作曲家の中でも、
モーツアルトは際だった存在です。
人々が彼の才能に気づいたのは3歳の頃です。
5歳の時には、即興でメヌエットを作曲し、
離れた所からでも聞こえて来る音符は、
単音、和音を問わずたちどころに言い当て、
そして信じられないほど長い大曲を一度聴いただけで、
楽譜に書き記したモーツアルトは
「神童」と言われるにふさわしい卓越した音楽的才能に恵まれていました。
しかし彼自身は、そのすばらしい才能を自らのものではなく、
神からの賜物と自覚していたのです。
あるとき依頼され作曲した新しい交響曲が成功を収めたとき、
彼は次のように記しています。
「すべてがうまく行きますようにと神に慈悲を求め、
神の栄光が増しますようにと祈りました。
すると、交響曲が鳴り始めたのです。」
「戴 冠 ミ サ」
この曲(ミサ曲ハ長調KV317)は、
モーツアルトが23歳の時(1779年)、オーストリアのザルツブルグで作曲したもので、
ザルツブルグ郊外にある教会の祭壇上に飾られている聖母マリア像に、
1751年冠がつけられたのを記念するため、
毎年「聖霊降臨祭」後の第5日曜日に行われる祝いのミサのために
作曲したと言われています。
「戴冠ミサ」は、ミサの通常文である
1)キリエ(あわれみの讃歌)
2)グロリア(栄光の讃歌)
3)クレド(信仰宣言)
4)サンクトゥス(感謝の讃歌)
5)アニュス・デイ(平和の讃歌)
とからなっています。